タカネとミドリダイと6330

into-the-sky2009-05-09


5月1日(金曜日)
 日一日、徐々に気温が高くなっていくような感じ。陽射しの強さは変わりない。朝からの、鮮やかな青空も、新緑だらけの木々も、やはり変わりない。そして、やはり、親の家に行っての朝食も、変わりない。
 そのとき、「今日は昔住んでいた街に行こう」と親がおっしゃったので、賛成して行くことに。10:30過ぎに車で家を出て向かった。10分くらい街路を走ってからは、中央高速。首都高速でお台場を通るルートを、ひたひたと走った。ほとんどが制限速度と少しくらいのスピードだから、本当にひたひた、である。
 そのまま東へと進み、途中のインターチェンジで降りて、8年ぶりの市内に入った。渋滞は承知の上で、あえて、JR駅近くの市街地を通った。以前は、踏切があって、一日中滞っていた駅前の道路も、線路が高架に上がってスムーズになっていた。昔からの宿場町の中心地は、およそその半分が、高層ビルや高層マンションなどに変わっている。駅前にある大きな2つの百貨店だけが、周囲から取り残されるように、当時の面影を色濃く残している。それ以外に何かが変わったような印象があった。よく見たら、駅前にプールされているタクシーの色が変わったからだ、と解った。
 駅を過ぎてからは、当時使っていた路線バスのルートを進んだ。駐車場だったり倉庫だったりした場所は、大きなマンションになったり大型家電店になったりしている。全体としての大きな変化は8年の経過くらいではないわけだが、個々の小さな変更で、街の雰囲気は変わって見えた。市街地を少し過ぎて一挙に広がる田園風景は変わらず。当時から「いつ店じまいしてもおかしくない」と思っていた、ある洋食屋も、健在だった。むしろ、フランチャイズファミリーレストランが、短期間で店をしめてしまっていた。まあ、何となく、世の中の図式を、象徴としているようだ。・・と書いたら大げさだろうか。主要道は、以前より交通量が多め。信号の手前を中心に混雑していたその道は、信号と信号のわずかな区間を除いて、ほぼ例外なく詰まっていた。
 自宅を出て約2時間で、以前住んでいた街に到着した。



5月2日(土曜日)
 小さなハチ見ないな虫が、同じような位置をホバリングしている。一瞬、どこかに急いで移動しているが、すぐに元の位置に戻り、またホバリング。この動作をもう、1時間くらい繰り返している。場所は、花の近くでも家の軒先の近くでも地面近くでもない。どこの近くでもないのだ。

 昨日の続き。
 8年ぶりの光景を目にしても、自分でも驚くことに、懐かしさはまったくと言って良いほど、ない。一週間ぶり、くらいの気分。以前住んでいた家には別の人が住んでいて、表札ももちろんその人の名前になっているのだが、これも不思議な気持ちになる。明らかに、かつて自分が住んでいた街、かつて自分が住んでいた家なのに、「今」との境界がない。だから、今日、その見えている家に帰ることができないのが不思議になってしまう。おそらく、当時と変わらなさ過ぎているからだと思う。記憶している過去の映像と、今の映像とが完全にオーバーラップして、重ならなかったりはみ出ているようなものが、何一つない。過去と現実が、一緒になっている、この初めての状況を、自分で解釈できないでいたわけである。大げさに書いていると自分でも感じるけれど、いや、実際はもっと心中穏やかでなくて、そのすべてを書けていない。
 30分くらい、ゆっくりとかつての街を観察した後は、自分が通っていた中学校と高等学校と、順に足を運んだ。しかし、ここではちゃんと懐かし気分に浸れる。そこに見ているものは、「過去」であることを、明確に認識できる。きっと、それぞれの学校生活というものは、過去の一時点でのことであって、終わりを実感しているからだろう。「今」との明確な境界がある。つまり、「生活する・住まう、という永続的なこと」と、「学校生活、という過去の一時点」との違い、ということだろう。
 1時間くらい市内の郊外を走り、再び、住んでいた街の近くの小学校まで戻ってきた。違う場所で昼食をとる予定だったが、その小学校の近くに、面白い雰囲気のレストランを見つけたので、そこに入ることに。「蔵 6330」という店。今の自宅の近くにもあって欲しい店、として、名前を掲げておこう。
 その後は、JR駅近くの市街地に戻り、国道14号を通って都心部へ。本籍がある日本橋を通過し銀座に抜けて、引き続き一般道を自宅に向かって走った。夜7時過ぎに帰宅。過去を振り返る一日。
今日のことは、明日に。


5月3日(日曜日)
 14℃の朝。もうちっともヒンヤリしていない。風はあるけれど、空気の透明度は今イチ。この一連の連休は、今日で何日目だろうか。もちろん、忙しく何かをしているということはではなく、まあ、それなりに活動的な日々。
 昨日の土曜日、朝食後は、ブログへ日記を投稿。緩慢なアップで、半月以上のタイムラグがあった。この連休中で5日違いまで間を埋めるべく、投稿に勤しんでいる。まあ、実際には勤しまないわけだが。書くことに比べれば、アップするのはほぼ一瞬なのだけれど、僕にとっては、このほうが面倒だと感じる、その結果、である。
 その後は映画を見て、本を読んだ。コーヒー豆や本2冊をネットで注文。コーヒー豆は、メジャなコーヒーショップより、安く帰る。併せて、デロンギエスプレッソマシーン用の石灰除去剤も注文した。必要なものはネットのこの店ですべて揃うので、便利。
 夕方前には、2つ隣の駅にある大きなホールで、クラシックのコンサートへ。NHK交響楽団による「ドヴォルザークのチェロ協奏曲」と「ベルリオーズ幻想交響曲」。サントリーホールとの音の違いは感じるけれど、元々、デフォルトの音質や環境なんてないわけだから、比較するまでもなく、良い音である。やはり、緻密さというか、丁寧さ、というものは、N響ならでは。半年に一度くらいしかクラシックのコンサートには行けないが、実際に聴くと、せめて一ヶ月に一度は聴きに来たくなる。
 特に、ベルリオーズでの「ハープ」の音を聴くと、体全体がシビレる感じ。バイオリンやピアノのようなメジャな楽器の音は、どんな環境でも比較的生音に近い音を聴くことができるが、ハープ音は、家に置くようなスピーカシステムでは聴けないだろう、というのが、持論。CD音源のせいか、環境のせいか、自分の耳のせいか、は、解らないけれど。しばらくは、この影響で、家でもクラシックを聴くことが多くなるだろう。
 アンコールを含めておよそ2時間くらいで終わり、自宅近くの駅へ。両親と3人で、外食。こちらも2時間ほど。その後、隣にある書店に寄って、Macintoshの雑誌と小説を購入して帰宅。