ホタルとラニーニャ

into-the-sky2007-06-17

 これ以上の贅沢な天候はない。昼間は暑くて、朝晩は涼しくて、乾燥していて、気持ち良くて、空は綺麗で、富士山も見える。こんな快適な日が何日も続く6月は、生まれて初めて。濃い青空の光を受けては跳ね返す遠くの山脈は、ブルーマウンテンのように、青緑に深く重く見える。

 昨日の夜は、ホタルを見ました。実は、生まれて初めてなんですよね。自宅から歩いて10分ぐらいのところに、旧来からの谷戸地形をそのままに近い形で残してある場所があるのです。そこには、小さな川もあって、草などが沢山植えられ、大きな石が散在しているのです。元来、ホタルが居ても不思議ではない場所なのですけれど、そこにどこかのボランティアの方々が、ホタルを増殖させたらしいのです(詳細は不確か)。それが、最近評判になったんですね。そこに親と行ってみよう、ということになって。
 ただ、素直に綺麗。暗闇に柔らかく浮かび、とまっては、ゆっくりと深呼吸するように光を放つ光景を見ると、吸い込まれそう。不思議だし神秘的だし。一晩中見ていても飽きない。一人で静かに見ていたい。短絡的に、すぐに影響されることは、あまり多くはないタイプの人間のつもりではあるけれども、その明々とした自然を、ゆっくりと舞うように動いている静かな命を見ると、いろいろと考えさせられる。人間の存在に関わらない、自然の小さなひとつに過ぎないはずの、そんな出来事を人間が見ると、不思議だと考え、神秘だと思い、魅力を感じる。人間は煩く、大げさに生き過ぎではなかろうか、という想いが、暗闇のひっそりとした灯に、吸い上げられる。この先の、まどろみの暗澹(あんたん)は、綺麗に光るホタルと、対象しても比定しえない。

 いつもの梅雨らしい梅雨だったら、見ることも難しいし、川の水量も増えて流れが早くなるから、そのような意味では、恵まれた今年のこの時期なのでしょう。夜はヒンヤリしていて気持ち良いし、シチュエーションも、完璧でしたね。ラニーニャのお陰なのでしょうか。まあ、そんなこともあって、「見直したぞ、ラニーニャ」と、言いたくなる日が続いております。7月か8月には、この前の梅雨入りの日が訂正されるでしょう。
 大陸からの高気圧が、前線を押し下げ、乾燥した空気を持ってきている。梅雨入りとされた日は、低気圧が前線を連れてくるように引き上げたのですね。梅雨前線を形成する潜在的な要素がないので、依然として春真っ盛りのような天気になっているのです。蒸し暑さをもたらす太平洋高気圧は、まだ下方にあって、その上には前線がある。これがどのような形で、日本付近を北に通過していくかが、今年の7月から8月の大まかな天候を決めるでしょう。例年より、遅れている傾向に振れていますけれど、この先、梅雨らしい天気になって、その後に平年の約40日間の梅雨空が続くとは、考えられません。足早に前線が北に通過していくか、奇妙な形で蛇行するように日本付近に居続け、そこに太平洋高気圧が強い偏差を伴って影響するか。さて、どれになるでしょう。前者だと、猛暑。後者だと雷雨続きの不安定な夏に加えて、いわゆる熱帯低気圧か台風(気象学的には、どちらも熱帯低気圧)のオンパレード。天気は、どこかで平均に近づけようとして、降水量も平年並みを取ろうとする、そんなお調子者なので、8月に入ると、集中豪雨になる地方が多くなるのかな。やはり、後者でしょうか。と、好き勝手なことをいっているわけです。僕、結構当たるんですよね。“最終的に自分の予想が外れる”、という予想がね(あーあ)。
 「でかしたぞ。ラニーニャ」というと、小学校の国語の教科書に出てくる、英訳の物語。「ラニーニャの意外性」というと、中学校の理科の教科書。「ラニーニャは逡巡せず」というと、本屋の目立つ所に平積みされているエッセイ。「暑く燃えたぎるラニーニャ」というと、・・・・・・。と余計なことを書いて、前半の文章との平均をとっておきましょう(あーあ)。